メンタルヘルス
ストレス過多な現代の日本では、30人にひとりがメンタルの不調を訴えて医療機関を受診していると言われています。
精神的な病気で治療を受ける人の数は増加傾向にあり、誰もが心を病んでしまう可能性を持っているのです。
しかし精神的な病気は、カゼやケガといった肉体の不調とは異なり、外からは気づきにくいもの。
実は病気なのに治療を受けていないという人を含めると、精神疾患の有病者はさらに増えると言われています。
「なんだか元気が出ない」「憂うつな気持ちが続いている」など、少しでも心の疲れや不調を感じたら医療機関に相談を。
精神の病気も体の病気と同じで、早めに気づいて治療を始めることが回復への近道です。
「心の調子が悪い…」早めの気づきと行動を
精神の病気と聞くと、やる気や元気を失ってしまうというイメージがあるかもしれません。
しかし心より先に、体が調子を崩してしまうケースも。
普段通りのメンタルバランスで生活しているつもりでも、心が無理をしているせいで肉体に大きな負担をかけていることがあります。
心と体、どちらか一方でも「調子がよくないな」と感じたら、ためらわずに内科や精神科、心療内科を受診してみてください。
医療機関を受診する基準やきっかけは?
強いストレスや不安が続くと、メンタルの不調はさまざまな形で現れます。
心と体、どちらの症状にも留意しておくことが大切です。
▼心に現れる症状
憂うつな気分、強い不安・緊張、怒りっぽい、イライラ、幻覚・幻聴 など
▼体に現れる症状
疲労、倦怠感、動悸、めまい、頭痛、不眠、食欲不振 など
何科を受診すればいい?
メンタルヘルスを扱う診療科は、精神科・心療内科・メンタルクリニックです。
「心の病気がどうかはわからない…」「精神科は受診しづらい」という場合には、内科でも構いません。
内科での診察結果次第でそのまま治療を始めることもありますし、精神科や心療内科を紹介される場合もあります。
▼精神科
・精神疾患を診る
・入院治療を行なう(外来もあり)
▼心療内科
・心の不調による肉体症状を診る
・精神疾患を診ることもある
▼メンタルクリニック
・精神疾患を診る
・通院治療のみ(入院施設なし)
精神科
うつ病や不安障害、双極性障害、統合失調症、アルコール依存症といった精神疾患を治療します。
外来(通院)治療だけでなく入院治療にも対応しており、薬物療法と精神療法を併せて実施していきます。
精神療法の中でも、認知行動療法(CBT)を行なっているのが、精神科の特徴です。
心療内科
過敏性腸症候群や気管支喘息、吐き気、胃痛など、ストレスによる身体症状を治療します。
肉体の症状を把握するため、内視鏡や超音波などを使って、内科の検査・診察を行なっている施設もあります。
軽度のうつや不安障害であれば、精神科と同じ治療を受けることも可能ですが、おもに体の症状が強い場合に適しています。
メンタルクリニック
精神科とほぼ同じ診察や治療を受けられますが、入院治療に対応しているクリニックは多くありません。(※メンタルクリニックは19床以下)
カウンセリングを大切にする、検査を重視するなど、クリニックごとに方針や特徴が異なります。
もしかして病気…?症状と病名をチェック
精神の病気には、うつ病や不安障害、統合失調症など、さまざまな症状があります。
それぞれに原因や症状があり、心の病気・精神疾患などと一括りにすることはできません。
病気によって発症の原因や症状は異なりますが、病名は違うけど症状はほとんど同じという場合もあり、専門的な知識を持った医師でも診断に時間を要するケースもあります。
うつ病
・いつも憂うつな気分
・以前は好きだったことにも興味が湧かない
・死にたいと思う
・食欲がない
・疲れやすい、だるい
・性欲が湧かない
・うまく眠れない
悲観的・ネガティブといった状態は、性格の傾向や一時的な気分の問題であることも少なくありません。
しかし一日中ずっと憂うつだったり、そんな状態が2週間以上も続いている人はうつ病が疑われます。
「うつ病になるのは心が弱いから」という意見がありますが、正しい原因は脳の機能障害。
メンタルの強弱に関わらず、うつ病になる可能性はあるのです。
不安障害
・原因はないが極度の不安におそわれる
・決まった行動を何度も繰り返してしまう
・人がたくさんいる場所に出たり、注目されたりするのがつらい
・原因不明の発作や動悸、発汗、ふるえ、頭痛などが起こる
・急にイヤなことを思い出して取り乱す
不安障害は、パニック障害・PTSD・社会不安障害・強迫性障害などの総称です。
「不安」は心が発する危険信号のようなもの。
不安という心のサインによって、これから起こることに用心したり集中力を高めたりすることができるのです。
しかし不安障害になると、不安が大き過ぎるせいで心だけでなく体にも支障をきたしてしまいます。
統合失調症
・姿の見えない人が話しかけてくる気がする
・いつも尾行されているように感じる
・うれしい、かなしいといった感情が低下する
・会話が噛みあわず、話しが支離滅裂でまとまらない
・会話を中断されると、それ以上話し続けることができない
統合失調症では、幻覚や幻聴、妄想などが顕著に現れます。
また、感情が希薄になる、行動や言動がまとまらないといった症状も強く、日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。
10代後半~30代と比較的若い世代で発症しやすく、男性有病者の方が多いという特徴があります。
アルコール依存症
・飲んではいけない時でも、飲みたいと強く感じる
・常にアルコールがそばにないと不安になる
・数時間おきに飲酒してしまう
・飲み始めると少量で中断できず、つい飲み過ぎてしまう
・飲んでいないと強い不安やイライラを感じる
・体からアルコールが抜けると手がふるえる
アルコール依存症になると、飲酒のタイミングや量をコントロールできなくなります。
「飲まずにはいられない」と、飲酒が習慣化している人は危険信号。
気づかないうちに飲酒量が増え、飲まないと不安やイライラを感じたり手足がふるえたりします。
アルコールは依存性薬物なので、「お酒がやめられないのは意思が弱いから」ではありません。
気持ちを強く持つだけで治るものではなく、医療機関での治療を受けなければ回復は困難です。
双極性障害
・自信に満ち溢れ、何でもできる気がする
・眠らなくても元気
・一人でずっと話し続ける
・買い物やギャンブルで浪費する
・何事にも意欲が湧かず、気持ちが落ち込む
・死にたいと思う
双極性障害は、元気があふれる時期(躁)と気分が落ち込む時期(うつ)の入れ変わりを繰り返す病気です。
双極性障害の正確な診断は難しく、うつ状態で受診するとうつ病だと診断されることも。
そのまま躁期に移るとうつが治ったと判断され、双極性障害の治療が遅れてしまいます。
気分の入れ変わりは、うつ期が数ヵ月~半年(数年におよぶケースもあります)、躁期が一週間程度というのが一般的。
しかし気分の高揚と落ち込みが混在する混合状態や、気分が頻繁に入れ変わるラピッドサイクリングが起こる場合もあります。
更年期障害
【女性の場合】
・身体症状/のぼせ、顔のほてり、動悸、息切れ、多汗、耳鳴り、頭痛、めまい など
・精神症状/イライラ、不安、うつ症状、不眠 など
【男性の場合】
・身体症状/ED(勃起不全)、のぼせ、倦怠感、多汗、耳鳴り、頭痛、めまい など
・精神症状/不眠、無気力、記憶力・集中力の低下 など
更年期障害は、ホルモン分泌量が低下する40代以降に起こる症候群。
女性は閉経前後の10年ほどの期間を更年期といいこの期間に現れる不調を更年期障害と呼びますが、男性は40代以降なら何歳でも症状が起こる可能性があります。
治療では、男女ともにホルモン剤の投与が行われます。精神症状が強い場合には、抗不安薬や睡眠薬も使います。
また、食事療法や運動療法といった生活習慣の見直しも実践していきます。